16世紀後半、女性として初めて<沙器匠 >の座に上りつめた朝鮮一の陶工、ユ・ジョンの波瀾万丈な半生を描く『火の女神ジョンイ』。モデルとなったのは実在した陶工で、“有田焼の母"とも称される百婆仙(ひゃくばせん/ペク・パソン:1560年~1656年)だ。慶長の役の際に渡来し、九州で数百人もの陶工を指導して敬愛された百婆仙は、はたして故郷・朝鮮でどんな日々を送っていたのか? 本作では、百婆仙にユ・ジョンという名を付け、彼女が沙器匠となるまでのサクセスストーリー、そして王子・光海君との身分を超えたロマンスをドラマティックに描き出した。『宮廷女官チャングムの誓い』の水剌間(スラッカン)、『イ・サン』『風の絵師』の図画署(トファソ)、『トンイ』の掌楽院(チャンアグォン)、『ホジュン~伝説の心医~』の内医院(ネイウォン)といった宮中の部署に続き、王室の陶器製造所である分院(プノン)が初めて韓国時代劇の舞台となったことも話題に! 一流の沙器匠を目指し、男装して分院に入ったジョンの奮闘と出生の秘密、切ないラブストーリーや宮中の権力争いなど、次々と繰り広げられるエピソードから目が離せない。
ジョン役でタイトルロールを務めたのは、天才子役から演技派女優へと成長を遂げたムン・グニョン。天才絵師を演じた『風の絵師』から約5年ぶりに時代劇に出演し、男装にも再挑戦。撮影3カ月前から特訓したという、陶芸の腕前にも注目が集まった。明るくひたむきなジョンに惹かれていく光海君を演じたのは、『チャクペ―相棒―』『いとしのソヨン』で大ブレイクしたイ・サンユン。名君か暴君か、韓国でも評価の分かれる朝鮮第15代王・光海君を人間味たっぷりに演じて好評を博した。さらに、『その冬、風が吹く』のキム・ボムが幼なじみのジョンを守り抜くテド役で時代劇デビュー。華麗なアクションや長髪スタイルで視聴者を魅了した。また、パク・コニョンはジョンの異母兄にあたるユクト役を演じ、ムン・グニョンと映画『ダンサーの純情』(2005)以来の再共演を果たした。『優しい男』のイ・グァンス扮する臨海君の憎めない悪役ぶりも必見だ。
脇を固めるベテラン俳優陣もいまだかつてない豪華さ! ジョンの仇であり、実父でもあるイ・ガンチョン役を演じるのは、韓国時代劇の大御所、チョン・グァンリョル。目的のためなら人殺しすら厭わない悪役だが、息子ユクトを愛する父親としての一面も覗かせる。また、朝鮮王朝第14代王・宣祖に扮したチョン・ボソクは、どこかつかみどころがない王の姿を巧みに表現。側室の仁嬪キム氏や臣下の計略をサラリとかわす様が小気味よい。一方、商団のソン行首を演じるのは、ソン・オクスク。堂々とした女商人の存在がドラマに深みを与えている。さらに、数々の映画やドラマで名脇役として活躍してきたピョン・ヒボンが、ウルタムとジョンの師匠ムン・サスン役を熱演。ジョンとの心温まるやりとりから、ガンチョンと対峙する緊張感あふれるシーンまで、幅広く味のある演技を見せる。韓国を代表する実力派俳優たちの演技バトルは圧巻だ。
宮中の権力争いに巻き込まれ、やがてクーデターによって廃位された悲劇の王、光海君。『火の女神ジョンイ』では、そんな光海君が即位する前の日々が描かれる。ジョンを心から愛する光海君、身分の違いからその想いを受け止められずに葛藤するジョン。愛し合いながらもすれ違う2人の姿が切ない。一方、ジョンが光海君に惹かれていることを知りつつ、ジョンをそばで守り続けるテドの一途な想いにも胸を打たれる。また、テドに片想いし続けてきたファリョンが悪女に変貌していく様を『オ・ジャリョンが行く!』のソ・ヒョンジンが熱演。ガンチョンの息子で、陶芸一筋だったユクトはそんなファリョンに心を奪われ、恋愛模様はより複雑に絡み合っていく…。『太陽を抱く月』のチン・ジヒ、『大風水』のノ・ヨンハク、『ペク・ドンス』のパク・コンテほか、ピュアな初恋のエピソードでドラマの序盤を盛り上げた子役俳優の名演技も視聴者に絶賛された。
本作のプロデュースを担当したのは、韓国ドラマ史に残る傑作と名高いラブストーリー『勝手にしやがれ』(2002)を生み出したパク・ソンス。その他の代表作に、『No Limit~地面にヘディング~』(2009)、『Dr.ギャング~ろくでなしの恋』(2006)、『おいしいプロポーズ』(2001)などがある。韓国で行われた製作発表会では「ジョンの燃えるような情熱を通して、視聴者を癒し、元気づけたい」とコメントした。さらに、『アラン使徒伝』『キング~TwoHearts』(ともに2012)、『階伯〔ケベク〕』(2011)などの話題作を手がけたチョン・デユンも演出に参加。脚本は、『ペク・ドンス』(2011)の原作コミックを元にドラマ化を担ったクォン・スンギュ。『ペク・ドンス』に続き、『火の女神ジョンイ』のノベライズ本を出版して話題を呼んだ。